豊かな音楽的風土の中で生まれたペトロフ
ペトロフ社は1864年、創始者アントニーン・ペトロフによって、チェコ共和国首都・プラハの東約100kmの地に設立されました。チェコというと、もしかしたら「東側の国」という多少暗いイメージと結び付けられる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、かつてはスメタナ、ドヴォルザーク、ヤナーチェク
といった大音楽家を輩出し、チェコフィルという世界的にも有名なオーケストラを育んだ
、豊かな音楽的土壌を持った国だという事をご存知でしょうか。
もともとドイツやオーストリアと国境を接する地理的位置にあり、その間での音楽的交流はかなり盛んだったようです。 例えば、モーツァルトの有名なオペラ「ドン・ジョバンニ」
は、ウィーンではなくプラハで初演され、好評を博しました。
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ドヴォルザーク博物館
ミニホールのPETROF |
スメタナ像 |
モーツァルト博物館 |
そのような、豊かな音楽的風土の中で、1864年から製造をはじめたペトロフは 、チェコばかりかヨーロッパを代表するピアノメーカーへと成長を遂げるのです。1895年には、ウィーンの王室から「御用達」メーカーとして認定され、また、今から100年程前に輸入されたと思われるペトロフが、1926年の帝展に出品された中村大三郎の屏風画に描かれているなど、わが国にも早くから紹介されていました。
京都市美術館所蔵 中村大三郎画《ピアノ》
<激動の時代を生き抜き、今も尚発展し続けるペトロフ>
設立後、成長と発展を遂げてきたペトロフ社も、第二次世界大戦後のソビエト連邦の強力な政治的・軍事的圧力のもとに成立した社会主義政権の前には、一時的に雌伏を余儀なくされます。
文化的な活動は大きく制約を受け、主な産業は国有化され、 ヨーロッパでもかなりのシェアを誇ったペトロフ社もその例外ではありませんでした。しかし、ヨーロッパの東西の鉄のカーテンが役割を終え、チェコの独裁的な社会主義政権が倒れる1989年以降、ペトロフはこれまで以上に
飛躍的な進歩を遂げていくことになるのです。そして
ヨーロッパ最大のピアノメーカーとなった今でも、ペトロフの成長は発展途上であるように思われます。最近では、他の欧州メーカーからのOEM生産の依頼も相次ぎ、最高級ピアノの一つとされるドイツのベヒシュタイン社からホフマンブランドでの提携を取り付けたりと、ペトロフの評価はますます高まってきています。また、品質的にも弾きやすい軽快なタッチを実現し、良質なボヘミアンスプルースを使用した響鳴板からあふれる、
豊かでまろやかな、上品なトーンとあいまって、
ヨーロッパ一流ピアノメーカーの一員と評されるようになりました。
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